09.06月02日 | ||
「やきとりじいさん体操」を考案 岡田麻紀さん(32) | ||
哀愁漂うメロディーにユニークな振り付け。「焼き鳥の街」として福島市をPRするキャンペーンソング「やきとりじいさん」(作詞作曲・もりたかし)を使ったダイエット体操を考案し、一躍、時の人となった。講演会、テレビ出演と全国を飛び回る毎日だが、これまでの道のりは、平坦ではなかった。 ―ばかにするひと ばかにされるひと どうせならばかにされましょう 歌詞の一節一節が心にしみた。ダイエットに失敗し続けた12年間。つらさを乗り越えて今、ようやく「ありのままの自分でいい」と思えるようになった。 始まりは大学入学だった。上京して初めての独り暮らし。ストレスから1か月で10キロ太った。見回せば、きれいな女子大生ばかり。“ダイエット地獄”に落ち込んだ。 スポーツ、食事療法、断食道場――。一時的にやせはしてもすぐにリバウンドしてしまう。エステ会社の痩身(そうしん)コンテストにも参加した。応募の1000人から最終選考の30人に残ったが、テレビ撮影を終えたとたん、「津波のような食欲」に襲われた。3日後、体重は13キロ増えていた。 この体がイヤ。誰も私を理解してくれない。そう考える自分自身が嫌いだった。 転機は突然、訪れた。 アジアの貧困地域に生きる子供たちについてリポートした冊子を、友人が届けてくれた。そこに紹介されていたのは、1日1食で暮らす施設の子供たち、空腹をシンナーで紛らわすやせこけた路上生活の男の子。 ショックだった。「この子たちの境遇に比べれば、理想の体形でないことなど何でもない。生まれて初めて、太っている自分でいいんだと思った」。自己を肯定できると、生きるのが楽になった。暴飲暴食もぴたりとやんだ。30歳になっていた。 「やきとりじいさん」に出会ったのは1年後。講師を務める体操講座で使う曲を探していた時、知り合いがCDをくれた。車内で聞いた瞬間、「これだ」と思った。テンポが速すぎず、遅すぎず。何より歌詞がいい。 自宅で聴き直すと、「勝手に体が動いて」即座に振り付けが出来た。ジャズダンスからヒップホップまで、ダイエットのためにあらゆるダンスを学んだことが生きた。昨年6月、インターネットの動画投稿サイト「ユーチューブ」で紹介され、独特な振り付けが話題を呼んだ。東京のテレビ局にも取りあげられ、反響には本人も驚くばかり。同サイトのアクセス数は、56万件超と、今も増え続けている。 目指すのは「笑える体操」だ。やっている人も、見ている人も。24歳の時から3年間、青年海外協力隊員として滞在したオセアニア・バヌアツの人々の笑顔に触発された。日本のようにモノはなくても、とびきりの明るさがあった。 「辛(つら)いことにこそ感謝」。サインを求められると、そう書く。ダイエットに苦しんだ青春時代があってこその、今の自分だと思うから |