13.02月14日 | ||
カード決済でトラブルが増えるエステ業界 安全な新決済スキームは広まるか? | ||
エステティックサロンや脱毛サロンで、クレジットカードを巡るトラブルが増加している。客がカードで支払おうとすると、いつもは使えるカードが使えなかったり、分割払いできなかったりというものから、ひどいケースでは契約金額よりも多額の請求が来るトラブルが発生している。一方で店舗側にしても、カード決済した2カ月分の売上高が回収できないなどのケースが出ている。 ?これらのトラブルはカード決済で「決済代行」を使ったことで発生している。 ?実は、一部の大手を除く大半のエステ業者は国内カード会社と正式なカード利用のための加盟店契約を結んでいない。過去に一部の悪質なエステが強引な勧誘で高額の契約をさせたほか、施術チケットを大量に発行したまま倒産しまった会社もあったことから、カード会社が契約を次々と打ち切ってしまったのだ。業界に対する信用性を失墜した上、カードが使えない中小エステはその影響もあって売上高が減少し、非常に苦しい状況にある。 ?そこで多くの中小エステが決済代行の利用に流れた。国内カード会社は加盟店契約を締結してくれないため、海外カード会社と加盟店契約を締結している決済代行会社に決済を依頼したのである。 ?この方法は本来、カードの国際ルールに抵触する。しかし、取り締まっても次々に新しい決済代行会社が登場してくるためイタチごっこになっている。罰則もないため、事実上野放し状態だ。 ?決済代行が招くトラブル事例は冒頭に挙げたもののほかにもさまざまあるが、とりわけ深刻なのはエステが倒産したときや、強引に契約させられたためにクーリングオフを行うとき。国内カード会社と加盟店契約しているエステであれば、カード会社と話し合うことで返金が認められるなど、被害を最小限にとどめられる。対して、決済代行を使っている場合は加盟店契約している海外カード会社と交渉しなければならないため、おカネを取り戻すのは非常に困難だ。 そもそも決済代行は、出会い系サイトやアダルトサイトなどトラブルが多いために国内カード会社が加盟店契約しないサービスの決済で多く使われる。利用者としても、決済代行経由のカード利用は控えるのが賢明だ。 ?決済代行経由か否かを見分ける方法として最も手っ取り早いのは、エステなどの事業者に事前に確認すること。また、カード利用時に渡される控えを見ると、利用店舗名に決済代行業者の名前や電話番号が記されることが多い。 ?中小エステにとっても決済代行会社の利用はマイナス面が多い。利用者が取り出したカードを使えなければ店の信用が落ちてしまうし、決済代行会社が倒産すれば、1?2カ月分のカード決済した資金を回収できなくなる。都内のあるエステ経営者は、「最近3年間で2度も代行会社が倒産し、合計200万円が回収できなかった」と肩を落とす。 ?さらに手数料も不当に高い。国内カード会社と代理店契約できれば手数料は5%程度ですむことが多いが、決済代行を使っているため10%もの高い手数料を支払っているエステもある。決済代行会社が間に何社も入ることがあるため、手数料が高くなるのだ。 優良エステ業者だけを選抜し 国内大手カード会社と契約 ?決済代行によるトラブルが絶えないなかで2012年夏、中小エステでも国内カード会社を利用できる新決済スキームが登場した。 ?スキームを提供するのは、カード会社OBらが設立した日本決済システム有限責任事業組合(決済LLP、工藤克則代表組合員)。決済LLPは国内の大手カード会社と加盟店契約しており、中小エステは決済LLPの組合員になれば国際ルールにも抵触せずにカード決済が利用できるようになる。 ?ただし、決済LLPは優良なエステしか加入できない仕組みを導入している。加入時にはエステ1店舗につき5万円の出資を募るとともに、既存組合員の3分の2以上の同意が必要。売上高の10%を半年間決済LLPでプールしておくことで、万が一エステが倒産したりトラブルを起こしたりしても、決済LLPが顧客への返金に対応する。こうしたセーフティネットを構築することで、国内カード会社と加盟店契約できたのである。利用控えには各エステの店舗名が記載されるので、利用者も安心だ。現在はVISA、MasterCard付帯のクレジットカードによる決済サービスだけだが、将来は他の国際ブランドとの提携も検討していく。 エステ市場の年間売上高は3400億円、店舗は約1万7000店と言われる巨大市場であり、優良なエステも当然ある。消費者、エステ経営者が安心して利用できる仕組みが登場し、優良なエステが生き残っていく道筋を示したことは業界にプラスだろう。 ?もっとも既存組合員の承認が必要なだけに普及のスピードが遅く、今のところ加盟しているエステは約100店舗にとどまる。決済LLPは「健全な経営をしているネイルサロン、飲食店などにも展開が可能」としており、他業界への展開も注目される。 ?(「週刊ダイヤモンド」編集部?野口達也) |